3C分析とは何か?
今回は、ビジネスの世界で最もよく使われるフレームワークの一つである3C分析についてご紹介します。
3C分析は、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の頭文字を取った分析方法であり、これら3つの観点から事業環境について全貌を理解し、自分の事業機会を見極めるために使用します。「事業機会を見極めよ!」という漠然としたお題が降ってきても、「どうすればいいか分かんない!」と思ってしまうでしょうが、この3Cの切り口を活用すれば、網羅的に分析することができます。
顧客・市場(Customer)
顧客・市場(Customer)では、自分が活動している、あるいは活動しようとしている事業領域において、顧客が望んでいるものをデスクトップリサーチやインタビューを通して徹底的に深掘りしましょう。顧客はどのような商品・サービスを望んでいるのか、それを得るためにどのような購買行動を起こしているのか、既存品に対する不満はどこにあるのか、といったことが例として挙げられます。
これにより、これから相手にしようとしている人物たちの解像度を一気に上げます。
また、顧客だけではなく、市場の動向に目を向けることも大切です。いかに顧客が目を輝かせて商品・サービスを熱望していたとしても、その市場規模が小さい場合や、既に成長が止まっていた場合はビジネスとしての成功は収めにくいでしょう。そのため、市場の規模や成長性といったマクロ動向もおさえておく必要があります。
こうしたことが理解できれば、分析対象にしている顧客や市場が、自社にとって魅力的なのか否かを判断するための材料を揃えることができるのです。
競合(Competitor)
競合(Competitor)では、自分がライバルを出し抜いて競争優位性を確立するために、競合についてしっかりと分析・理解するステップです。具体的には、そもそも市場にはどのような競合がいてそれら競合の売上・利益・市場シェアといった数値はどうなっているのか、こうした競合の強み・儲けの仕組み・勝ち筋はどのようなものか、あるいは反対に弱みがどのようなところにあるのかを調査していくとよいでしょう。
このように競合の状況を理解することで、「競合は〇〇領域には進行していないからここが狙い目かも!」、「競合A社は本体代金を実質無料にする代わりに、付属品で利益を獲得しているな。これは自社も模倣すべきだ!」といった事業機会を見つけることができます。
自社(Company)
最後は、自社(Company)について分析しましょう。ここでは自分の強み・弱みを棚卸しすることで、どのような強みを持って競合に打ち勝っていくか、弱みをどのように克服していくかを検討します。
競合分析と同じように、自分の売上・利益・市場シェアといった項目から定量的に状況を把握することは簡単ですが、いざ自分の強み・弱みは何かと聞かれてもイメージできないかもしれません。
あなたも「自分の強み・弱みを教えて」と言われても、困ってしまうと思いますが、案外、自分たちのことは客観的に理解できていないものなのです。
さて、このようなケースにおいては、これまでの自社の成功例・失敗例から定性的に振り返っていくことが効果的です。例えば、社内で大成功した事例をあぶりだしてみると、実は自社では当たり前のように感じられていた販売員の数・品質が、他社からすると圧倒的な強みになっているかもしれません。あるいは、自社が自慢に思っていた大規模倉庫が、商品の回転率を悪化させている弱みなのかもしれません。
こうした事例を集めてみれば、自分の強み・弱みが何なのか浮かび上がってくるでしょう。
3C分析を行う際のポイント
さて、ここまでで3C分析のイメージが湧いてきたかと思いますが、1点だけ注意点を述べておきます。それは、とりあえず調査してみようという発想は絶対にNGであり、調査する際は必ず「仮説」を持っておく必要があるということです。
仮説とは、「その時点において最も答えに近いと思われる仮の答え」のことを指します。3C分析においては、調べようと思えば1日でも1週間でも1ヶ月でも1年でも調べ続けることができます。しかし、みなさんも経験があるように、情報量が増えれば増えるほど、結局何が言いたいんだっけ?の状態になってしまいます。そのため、分析を始める前は「おそらく市場はこうなっているんじゃないかな?」、「競合はこういった勝ちパターンを持っているのでは?」といった仮説を持ち、それを検証するために必要な情報のみを収集するという癖を付けてください。
最初は設定した仮説とまったく異なる調査結果が出てくると思いますが、その結果を踏まえて仮説を軌道修正して再度検証を繰り返すことで、全方位的になんとなく調べ続けるよりも示唆に富んだ分析結果を獲得し、結果として自社にとって優れた事業機会を見つけることに大いに役立ちます。最初は抵抗感があるかと思いますが、ぜひチャレンジしてみてください!
セブンイレブンのコーヒーの事例
最後に、これまで学んだ内容をセブンイレブンのコーヒーの事例で振り返っていきましょう。コンビニコーヒーは2013年にセブンイレブンが提供を開始し、2019年には累計販売数が50億杯を突破した超人気商品です。
それまでは一切提供されていなかったコンビニコーヒーという商品は、3C分析で捉えると成功の秘訣がよく分かります。
まず、当時のコーヒー市場は規模・成長性ともに十分なものでした。その背景には、顧客の「安くておいしいコーヒーを手軽に飲みたい」というニーズがあったことは言うまでもありません。そしてその顧客ニーズは、コーヒー業界における競合となるスターバックスやタリーズといったコーヒーチェーンや、飲料メーカーがコンビニやスーパーで提供する缶コーヒーやボトルコーヒーによって満たされていました。
しかし、セブンイレブンは「顧客はもっともっと安くて美味しいコーヒーを手軽に飲みたいはずである」と考えました。そのような状況下で、セブンイレブンは自社の最大の強みが、顧客がいつでも・どこでもアクセスできる圧倒的な店舗数であることをしっかりと把握し、そのうえで各店舗にコーヒーマシンを導入することで、本業とは異なるコーヒー事業において大成功を収めました。
この一例から、3C分析が自社の事業機会を見つける上で非常に意義のあるフレームワークであることが分かったと思います。もちろん、フレームワークに過ぎないため、「何でもかんでも3Cで分析しなくちゃいけない!」というわけではありませんが、さまざまな分析活動における手がかりとして、ぜひ使用してみてください!
まとめ
さあ、最後に3C分析について振り返っていきましょう!
- 3C分析とは、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の頭文字を取った分析方法であり、事業環境の全貌を理解し、自社の事業機会を見極めるために使用します。
- 顧客・市場(Customer)では、顧客が抱えているニーズや不満などを把握するというミクロな視点はもちろん、市場規模の大小や成長性といったマクロの視点で状況を把握します。
- 競合(Competitor)では、自社が他社を出し抜いて競争優位性を確立するために、競合の儲けの仕組みや勝ち筋、市場におけるポジションなどを把握していきます。
- 自社(Company)では、自分の強み・弱みを棚卸しすることで、どのような強みを持って競合に打ち勝っていくか、弱みをどのように克服していくかを検討していきます。
- 3C分析を行う際は、とりあえず調べてみようという発想ではなく、必ず仮説を持ち、それを検証するという発想にすることで、調査の効率・効果を最大化することができます。
3C分析は、いまやどんなビジネスマンでも知っているフレームワークです。フレームワークは何度も使って失敗してこそ、自分のなかで磨かれていきます。ぜひ皆さんも恐れずに、3C分析を明日から使ってみてください!