マーケティングミックス(4P)とは何か?
今回は、マーケティングミックスについて解説させていただきます。
さっそくですがマーケティングミックスとは、顧客に刺さる商品・サービスを提供するための具体策を練ることを指します。詳しく言うと、製品を意味するProduct、価格を意味するPrice、流通経路を意味するPlace、宣伝方法を意味するPromotionの4つを漏れなく考えることであり、それぞれの頭文字を取って4Pと言われることもあります。
それでは、実際に4つのPについて見ていきましょう!
製品(Product)
Productでは、顧客に提供するモノ・サービスについて考えていきます。ここで重要なのは、モノ・サービスを本質的価値と補助的価値の2つに分けて考えるということです。
まずは本質的価値の事例を述べます。自動車の父でもあるヘンリー・フォードの時代においては、代表的な移動手段は馬車でした。このような中で、フォードは「人々が求めているのは馬車ではなく、できる限り早く移動することである」という本質的ニーズをしっかりと理解し、自動車という新しい価値を世の中に生み出しました。これぞまさに、自らが提供する、あるいは提供すべきモノ・サービスの本質的価値を見極められた事例と言えるでしょう。
一方、誰でも自動車を手にすることができる現代において、自動車の本質的価値そのものだけでは顧客を魅了することはできません。購入後のアフターサービスや接客時の対応、ブランドといった補助的価値を充実させることが、顧客の購入という行動に繋がるのです。
このように、本質的価値・補助的価値の両輪を押さえながらProductを検討する必要があります。
価格(Price)
次にPriceについて見ていきましょう。価格について考える際は、3つの観点を網羅しておく必要があります。
1つ目は、モノ・サービスを提供するために要するコストです。コストよりも低い価格に設定してしまうと売れば売るほど赤字になってしまいますので、基本的には提供コストよりも高い価格に設定するようにしましょう。
2つ目は、競合の価格です。顧客は自社の商品・サービスだけでなく、競合他社の商品・サービスも含めて検討し、最終的な購入先を決定します。競合よりも低い価格にして販売量を稼いで最終的な儲けを得るのか、あるいは高付加価値な商品・サービスで差別化を行いながら高い価格に設定して最終的な儲けを得るのか、じっくりと考慮する必要があります。
3つ目は、顧客にとっての価値であり、その商品・サービスが顧客にとってどれほどの価値があるのかについて考えておくことを意味します。例えば、皆さんであれば、安全に宇宙旅行に行けるサービスにはいくら払うでしょうか? 10万円であれば行きたいという人もいれば、10億円払ってでも行きたいという人もいるでしょう。このように顧客目線に立って、その商品・サービスそのものの価値に向き合うことが重要です。
価格設定をする際は、コスト・競合価格・顧客にとっての価値をそれぞれ考えてマッピングし、そのうえでどのような価格に設定するかを考えましょう。正解があるものではないですが、「この価格ならばいける!なぜならば・・・」という理由付けができるくらいには頭を使っていく必要があります。
流通経路(Place)
Placeは、商品・サービスを顧客に届けるまでの一連の経路を決めることを指します。そして、この経路の決め方には、大きく分けて2つの考え方があります。
1つ目は開放型チャネル政策です。これは、顧客に商品・サービスを届けるまでの経路をできる限り広くする方法です。この方法を採用することで、より多くの顧客に届けることができますが、ブランドや価格などに対するコントロールが効きにくくなってしまうことが難点です。
2つ目は閉鎖型チャネル政策です。これは開放型チャネル政策とは真逆であり、顧客に商品・サービスを届けるまでの経路をできる限り狭くする方法です。こうすることで、ブランドや価格などに対するコントロールを効かせられる一方、アプローチできる顧客の数は少なくなってしまうことが難点です。
自分が提供したいものを踏まえ、どのような流通経路を設計すべきなのか考えていく必要があります。特に昨今は、店舗などのリアル経路だけではなく、オンライン経路を活用することが当たり前になっていますので、そのあたりもしっかりと考えるべきです。
宣伝方法(Promotion)
Promotionは、自社の商品・サービスや自社そのものについて、顧客に届ける手段を考えることを指します。企業が顧客に情報を伝える方法として代表的なものは4つあります。
1つ目は広告であり、テレビCMや新聞・雑誌の広告、インターネット上のオンライン広告などが該当します。広告のメリットは何といっても多くの顧客にアプローチできることですが、一方通行の情報伝達になってしまうため、しっかりとした説明が必要になる商品・サービスには向いていません。
2つ目は販売員活動であり、店頭などで顧客と直接話をしながら宣伝することを指します。このメリットは顧客と相互にコミュニケーションを取りながら深い情報伝達ができるという点ですが、その一方で相手に出来る顧客の数が限られてしまうというデメリットがあります。
3つ目は広報であり、テレビや新聞・雑誌などに無償で、自社や商品・サービスの紹介をしてもらうことを指します。この方法のメリットは、無償で顧客にアプローチできることに加え、第三者からの評価であるため信頼性が高いという点が挙げられます。
一方、自分たちだけで記事の掲載有無や内容をコントロールできるわけではない点がデメリットとして挙げられるでしょう。
4つ目は販売促進であり、試供品の提供、ボールペンなどの記念品の提供、各種イベントの開催などが該当します。知名度が低いのでとにかく1度使ってほしい場合などには有効ですが、特典目当てで一時的な効果しか生まれないなどのデメリットに注意する必要があります。
広告・販売員活動・広報・販売促進というさまざまな手段のなかから、メリットとデメリットを踏まえつつ、自社にマッチした宣伝方法を検討していくことが高い宣伝効果を得るためには重要と言えるでしょう。
スターバックスの事例で考える
ここまでお話ししたマーケティングミックス(4P)を、スターバックスの事例を踏まえて考えてみましょう。
まずはProductについて、スターバックスの提供する本質的な価値にはコーヒーそのものの味はもちろん、あのオシャレでゆったりできる空間も含まれています。そのような環境において、補助的価値として注文時に名前を呼んでくれるサービスや、非常に気さくな店員さんの接客があります。顧客はこれらすべてを肌で感じ、スターバックスのファンになっていくわけです。
Priceについては、コストを上回る金額であることは言うまでもないですが、競合よりも高い価格に設定されています。これは顧客にとっての価値に自信があるからであり、実際に私たちも競合より数百円高い商品を違和感なく購入していることからも理解できると思います。
Placeについて、フランチャイズ展開などはせず、スターバックス独自のブランドを徹底的に維持するように努めています。出店地は顧客の多い場所であり、既に述べたように店内も非常に落ち着いた魅力的な空間になっています。
最後のPromotionでは、新商品の販売時にはSNSなどを活用した大々的な宣伝活動を行っています。有名人たちが勝手に宣伝してくれる仕組みが出来上がっているため、スターバックスは集客に困らず、絶え間ない人気を手にすることができているのです。
このように、企業の商品・サービスに関して考えなくてはいけないことも、マーケティングミックス(4P)の観点に立てば、抜けもれなく考えることができるようになります。そういったことからも、マーケティングミックス(4P)は非常に優秀なフレームワークと言うことができるでしょう。
マーケティング全体における位置付け
最後に、マーケティングミックス(4P)を、マーケティング活動全体の視点から簡単に触れておきましょう。
マーケティング活動は、まずは顧客・市場のCustomer、競合のCompetitor、自社のCompanyといういわゆる3Cの観点で環境分析を行って事業機会を見極め、その後はセグメンテーション/ターゲティングで狙うべき市場セグメントを決定し、そしてそのセグメントにおいて自社の優位性をどのように発揮して戦っていくかというポジショニングを行い、最後に今回学んだテーマでもあるProduct・Price・Place・Promotionというマーケティングミックス(4P)を策定して事業内容を具体化していきます。
今回はマーケティングミックス(4P)に絞ったお話しでしたが、その前後の流れについてもしっかりと理解しておくことが必要です。詳細を知りたい方は、ぜひ別の記事をご覧いただき、学びを深めてみてください。
まとめ
さあ、最後に今回学習した内容を振り返っていきましょう!
- マーケティングミックスとは、顧客に刺さる商品・サービスを提供するための具体策を考えることを指し、Product・Price・Place・Promotionの頭文字を取って4Pと言われることもあります。
- 製品を意味するProductは、顧客に提供するモノ・サービスについて考えることを指しますが、その際は本質的価値と補助的価値の2つを考慮することが重要でした。
- 価格を意味するPriceについては、コストから逆算した価格、競合と比較した価格、顧客が感じる価値を表現した価格、という3つの観点を網羅して価格設定する必要があります。
- 流通経路を意味するPlaceは、商品・サービスを顧客に届けるまでの一連の経路を決めることを指し、開放型チャネル政策と閉鎖型チャネル政策という考え方がありました。
- 宣伝方法を意味するPromotionは、自社の商品・サービスや自社そのものについて顧客に届ける手段を考えることを指しますが、具体的には広告・販売員活動・広報・販売促進の4つの手段がありました。
マーケティングミックス、つまりProduct・Price・Place・Promotionの4Pを理解し、顧客に刺さる商品・サービスを提供するための具体策を漏れなく検討していきましょう!