ロジックツリーで分解せよ

ロジックツリーとは何か?

ロジックツリーとは、物事の原因や解決策をモレなく・ダブりなく分解していくための方法です。読んで字のごとく、ロジックつまり論理を、ツリーのように枝分かれさせて分解していくことから、このような名前で呼ばれています。

ロジックツリーを使うべき理由

このロジックツリーは、思い付きのアイデアから脱却し、思考に広がり・深さを持たせることができる最強のツールであるため、しっかりと身に付けておく必要があります。少し事例を踏まえて考えてみましょう。

例えば、従業員の離職増加に悩む企業の社長が、「離職が増えているのは給料に対して不満があるからだ!」というアイデアを出したらどうでしょうか。なんとなく合っていそうな気がしてしまいますが、これをロジックツリーで分解してみましょう。

まず、「従業員の離職が増加したのはなぜか?」を左側に持ってきて、その理由を分解してみます。ここでは「会社に対する不満」と「会社に対する不満以外」で分解しました。さらに、「会社に対する不満」は金銭報酬・人間関係・会社の将来性・業務に対するやりがいなどで分解していくことができますし、「会社に対する不満以外」は自己実現・健康上の理由・ライフイベントなどに分解することができるでしょう。

ここで、先ほどの社長の発言を思い出すと、彼が思いついたのはこの「金銭報酬が不十分だった」という原因ですね。ただ、この会社の場合は、給料に対する不満を持っている社員はそこまで多くなく、実際は業務に対するやりがいを感じられないこと、もっと具体的に踏み込むと、評価者との面談回数が少なく不透明であるなど、評価プロセスに対する不公平感が離職の最大の原因だったのです。

このような状態では、社長が給与に対する不満解消にお金や時間をかけても、離職率は一向に改善しません。本当は「評価プロセスの見直し」という打ち手を講じるべきであったのです。

このように、ロジックツリーでモレなく・ダブりなく候補を洗い出していくことで、的外れな思い付きのアイデアではなく、非常に幅広いアイデアを発想したり、「金銭報酬を見直そう」という粗い粒度ではなく「業務に対するやりがいが、評価プロセスの不公平感によって失われているため改善しよう」といった非常に深いアイデアを思いつくことができます。

この思考に広さ・深さを与えることができる点が、誰しもがロジックツリーを使うべき理由なのです。

どんな場面でロジックツリーを使うのか?

ちみなに、ロジックツリーには原因追求のロジックツリーと問題解決のロジックツリーの2種類があります。

「原因追求のロジックツリーは、WHY?(なぜ?)」を繰り返すことで、問題の根本的な原因を見極めるときに使用します。例えば、「なぜレストランの売上が減少しているのか?」という問いに対して、「WHY?」を繰り返すことで「客単価が減少しているから?」、「客数が減少しているから?」と深掘りしていき、さらに客単価の減少は「注文数が減少しているから?」、「高価格の商品が売れなくなっているから?」に分解、客数の減少は「既存客が減っているのか?」、「新規客が減っているのか?」といったかたちで分解していくことができます。これにより、これまで分からなかった売上減少の根本的な原因が、「新規客が減っているため」であることを発見できるのです。

原因追求の次は、問題解決のロジックツリーです。問題解決のロジックツリーは原因追求のロジックツリーで見つけた根本的原因を「HOW?(どのように?)」で繰り返し深掘り、アクションに結びつく具体的な解決策に落とし込む際に使用します。

先ほどのレストランの例ですと、「新規客を増加させる方法は?」という問いに対して、「HOW?」を繰り返して「商品を工夫する?」、「価格を工夫する?」、「提供方法を工夫する?」、「宣伝方法を工夫する?」といった要素に分解のうえ、商品の工夫は「グランドメニューを変更する?」、「特別メニューを追加する?」、価格の工夫は「商品自体を割引する?」、「割引クーポンを配布する?」、提供方法の工夫は「デリバリーを始める?」、「テイクアウトを強化する?」、宣伝方法の工夫は「有料広告を出す?」、「チラシを配布する?」といった分解をすることができます。

このようにアクションをモレなくダブりなく並べたうえで「これまで取り組んだことのないもの」、「多額の予算が必要ないもの」、「業務自体の変更が不要なもの」といった評価基準で評価すると、「新規客を増やそう!」という抽象的なアクションが、「新規客を増やすために宣伝方法を工夫して、ファミリー層向けの住宅でチラシを配布しよう!」といった具体的なアクションに落とし込むことができるのです。

根本的な原因を突き止めるために「WHY?(なぜ?)」を繰り返す原因追求のロジックツリー、突き止めた原因を具体的なアクションに落とし込むために「HOW?(どのように?)」を繰り返す問題解決のロジックツリーの両方を覚えてください!

ロジックツリーを作る際の注意点

ちなみに、ロジックツリーを作る際は、次の3点に注意する必要があります。

まず、ツリーの各階層ができる限りモレなく・ダブりのない状態、いわゆるMECE(ミーシーと呼称)になる必要があります。MECEでなければ思い付きの羅列に過ぎず、ロジックツリーで整理した意味が薄くなってしまいます。

しかし、MECEにこだわり過ぎてしまうと検討に時間がかかりすぎたり、アイデアが当たり障りのないつまらないものになったりすることも事実であるため、どうしてもMECEにするのが難しければ、「できる限りMECE」という譲歩をしても良いでしょう。

次に、ツリーの右側が具体的な原因や解決策になっていることも重要です。導き出した原因や解決策が抽象的であれば、アクションに繋がることはありません。アクションに繋がらない検討は、ビジネスの世界では無価値ですので、必ずできる限り具体化し、アクションに繋がるような内容まで落とし込んでください。

最後に、ツリーの各要素が因果関係で結びついていることもしっかりと確認しましょう。各要素を「WHY?」や「HOW?」で分解していくロジックツリーの特性上、要素同士は因果関係で結びついているはずです。

だからこそ、最終的に講じる打ち手の効果が発揮されます。各要素にしっかりと因果関係が成立しているかも、念頭に置いてチェックしましょう。

ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの違い

まとめの前に、よくある疑問として、ロジックツリーとピラミッドストラクチャーの違いについて説明しておきましょう。

ピラミッドストラクチャーとは、上に結論を置き、下に結論を支える根拠を並べた構造のことを指します。具体的には、「今度の飲み会は焼き鳥屋がいい」という結論を主張し、そのあとに根拠として「前回は洋食だったから和食のほうがいい」、「部長も焼き鳥が好き」、「費用も予算内に収めることができる」といった要素を伝えるものです。

縦・横の違いはありますが、ボックスが線で繋がれていてロジックツリーと似ているので、両者の違いについて混乱する方が大勢いらっしゃいます。ずばり両者の違いをお伝えしておくと、ピラミッドストラクチャーは伝えるためのツールであるのに対し、ロジックツリーは考えるためのツールであるということです。

ピラミッドストラクチャーは、自分の考えを上手く整理して相手に分かりやすく伝えることを目的としており、「問いに対する候補をモレなく・ダブりなく洗い出そう!」、「原因追求や問題解決を徹底しよう!」といったロジックツリーの思想とは異なるものです。

なかなかイメージしずらいかもしれませんが、ロジックツリーは原因追求や問題解決の場面で登場する考えるためのツール、ピラミッドストラクチャーは検討した自分の考えを上手く伝えるツールと覚えておいてください。

まとめ

さあ、今回学習した内容を忘れないように振り返っていきましょう!

ロジックツリーとは、物事の原因や解決策をモレなく・ダブりなく分解していくための方法であり、思考に広がり・深さを持たせることができる最強のツールです。

  • 原因追求のロジックツリーは、「WHY?(なぜ?)」を繰り返すことで、問題の根本的な原因を見極めるときに使用します。
  • 問題解決のロジックツリーは、「HOW?(どのように?)」で繰り返すことで、アクションに結びつく具体的な解決策を検討する際に使用します。
  • ロジックツリーを作る際の注意点としては、①ツリーの各階層はできる限りモレなく・ダブりのない状態(MECE)にする、②ツリーの右側は具体的な原因や解決策にする、③ツリーの各要素は因果関係で結びつける、の3要素を守る必要があります。
  • よく混同されるピラミッドストラクチャーは伝えるためのツールであるのに対し、ロジックツリーは考えるためのツールであるため、両者は目的が異なっておりまったくの別物です。

これらの内容をしっかりとマスターして、ロジックツリーを使いこなせるようになりましょう。ちなみに、今回登場したMECEやピラミッドストラクチャーについても、別の記事でまとめてあるのでぜひご覧ください!

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