イシューを見極めよ

価値ある仕事

突然ですが、「価値ある仕事」って何だと思いますか。

よくある回答は、非常に高い品質を担保すること、とにかくスピーディーに仕上げることなど、与えられている仕事に対していかに早く・良い答えを出すか、これを「価値ある仕事」と言う方が大勢いらっしゃいます。

しかし、実はそういった回答は完全に間違っています。「価値ある仕事」というのは、そういったイケてる答えを出す度合いをとにかく高めることに加えて、いかに解くべき問いを見極めているかという観点が必要になります。この図で言うところの右上こそが「価値ある仕事」であり、左上というのは「価値ある仕事」ということができません。

イシューとは

この「物事の根本に関わるような解くべき問い」のことをオシャレに言うと、「イシュー」という言葉になります。イシューが何なのかを正しく見極めずに、与えられた仕事を淡々とこなしているだけでは、何の価値も生み出していない可能性があります。

例えば、上司から「競合A社について調べといて~」と言われて、頑張って色々な情報を資料にまとめて上司に報告したけど、「うーん」という悲しいリアクションだったり、結局集めた情報が一切活用されないみたいな場面がよくあるかと思います。これぞまさに、イシュー、解くべき問いを見極めていないがゆえに、せっかくの努力が水の泡になるという事例です。

これは当たり前と言えば当たり前で、「競合A社について調べといて~」と言われても、調べるべきことは競合A社の歴史・業績・強みから、社食で出てくる美味しいご飯まで何でも調べられるわけなので、何を調べていいか分かりません。

そのため、本来であれば上司に対して、「どうして競合A社について調べる必要があるんですか?」「何を目的にしていますか?」という風に問いかける必要があります。こうすると上司からは、「いや~、実は競合A社が出してきた新製品がめちゃくちゃ売れているらしくて、うちの会社も同じ製品を出そうかどうか迷っているんだよね~。」というような回答が来るかもしれません。

こうなるともうこちらのもので、今回のイシューは競合A社はどのような企業か?」などではなく、「わが社も、競合A社と同様の新製品を販売すべきか?」という非常に具体的な内容であることが分かります。このように、イシューを明らかにしない限りは、「めちゃくちゃ頑張ったのに無駄に終わる」ということが、何度も何度も何度も起こり得るわけです。

仕事の場面だけでなく日常生活の中でも、相手の質問に対して回答したら、なんか微妙な空気になった経験があるかと思いますが、それは相手が本当に答えてほしかったことを読み取れていないから、つまりイシューを押さえられていないから起こっていると言うことができます。

よいイシューの条件

ですが「いきなりイシューとか言われてもよくわかんない!」という方のために、よいイシューとは何かについて補足させていただきます。よいイシューの条件とはズバリ「具体的であること」です。具体的であればあるほど、イシューに対する解を導くことが簡単になっていくわけです。

例えば、「ビジネススキル習得市場は、今後どうなっていくか?」というイシューよりも、「ビジネススキル習得市場がリアル授業からオンライン授業へ移行していくことが予想されるため、わが社は先んじてオンライン化を進めるべきではないか?」というイシューのほうが、どのようなアクションを講じればよいかイメージしやすいという点は、直感的にも理解できると思います。

具体化する際のコツとしては、主語や動詞を省略せずに盛り込んでイシューを正確に表現すること、~どうなるか?ではなく~すべきか?でイシューを設定することでスタンスを取ることなどが挙げられます。

イシューの分解

ここまででいかにイシューが大事なのか、反対に言えばイシューではない問いに対して答えを出そうとすることがどれほどもったいないのかが理解できたと思います。しかし、単純にイシューを1つだけ設定しても、なかなか解くことはできません。ここで重要になってくるのは、イシューを分解するという作業です。

最初の例に戻ると、「わが社も、競合A社と同様の新製品を販売すべきか?」というイシューをそのまま扱ってしまうと、どのように検討していけばよいか、よくわかりませんよね。そのためにイシューを分解する必要があり、具体的には「競合A社の新製品にはどのような特徴があり、何が顧客に受け入れられているのか?」、「競合A社の取組に対し、他の競合はどのような対策を講じているのか?」、「他の競合動向やわが社の状況を踏まえると、わが社も同様の新製品を販売すべきか?」くらいの粒度にまで落とし込んでいくことになります。これであれば、最初の難しかったイシューも、検討できるイメージが湧いてくるのではないでしょうか?

また、同じく先ほど述べた「ビジネススキル習得市場がリアル授業からオンライン授業へ移行していくことが予想されるため、わが社が先んじてオンライン化を進めるべきではないか?」というイシューについても同様です。「ビジネススキル習得市場においては、本当にリアル授業からオンライン授業へ移行していくのか?」、「移行することで、同市場の勢力図はどのように塗り替えられるのか?」、「将来予測を踏まえると、わが社はリアル授業からオンライン授業への移行に踏み切るべきか?」など、手触り感の持てる粒度まで分解していくことが重要です。

まとめ

今回はイシューについてお話しさせていただきましたが、なんとなくイメージできたでしょうか。最後に、今回お話しした内容について振り返りましょう。

  • イシューとは、「物事の根本に関わるような解くべき問い」のことを指していました。
  • そして、よくある「とにかく目の前のお題に対して全力で取り組む」はいばらの道であり、まずは何よりもイシューを見極めることが「価値ある仕事」をするうえでの最重要事項です。
  • そしてイシューはふわふわとした問いではなく、できる限り具体的に設定することが答えを出すための近道になること、設定したイシューはさらに分解していく必要があることもお伝えした通りです。

最初は「うーん、イシューはよく分からん!」ということになるかもしれませんが、今日明日でできるようになることではありません。何より大事なのは、日常生活や仕事の中でイシューを意識し続けること。念仏のように「イシュー、イシュー、イシュー、イシュー」と唱えることでいつか悟ることができるので、ぜひ頑張ってください!

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