MECE(モレなくダブりなく)を徹底せよ

MECEとは?

みなさんは、MECEという言葉を聞いたことはあるでしょうか。MECEとは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略称であり、「ある事象がモレなくダブりなく切り分けられた状態」のことを指します。このMECEという考え方はビジネスの世界において、あらゆる論理思考のもととなる非常に重要な考え方なのですが、それはなぜでしょうか。

例えば、とあるファミリーレストランの店長が「最近店舗の売上が減っているから、その理由を分析してくれないかな?」と言い、それに対する社員のコメントが「売上低下の原因を探るために、まずは顧客を主婦・サラリーマン・子供・家族連れで分けて分析しました!具体的には・・・」であった場合、思わず店長は「あれ? うちの店って結構お年寄りの方も来てくれるけど、これモレているんじゃない? あと、旦那さん・奥さん・子供で来店された場合って、家族連れの分類や主婦・サラリーマンの分類とダブっちゃうんじゃないの?」というように突っ込みを入れたくなってしまいますよね。

これはまさに、考え方にモレやダブりがあると論理性が著しく欠落してしまい、調査や分析が不完全なものになったり、すべての聞き手に「本当にこれで大丈夫か?」という不安を与えたりしてしまう事例です。こんな事態を回避するためにも、ビジネスの世界においてはとにかくMECEであることが重要なのです。

MECEを実践するポイント

そしてMECEを実践する際に、絶対に頭に入れていただきたいことが1つだけあります。それは「意味ある切り分けを行う」ということです。クエスチョンマークが浮かんでくる方も多いと思うので、実際に見ていきましょう。

先ほどのファミリーレストランの例に戻り、「店舗の売上が低下している原因を突き止める」という目的のもとMECEな切り分けをしてみると、その切り分け方は無限にあります。

例えば、先ほどのように顧客の属性別であれば「高齢者、主婦、サラリーマン、高校生以上の学生、中学生以下の学生、未就学児、その他」で分けることもできますし、顧客の年齢別であれば「0歳~19歳、20歳~39歳、40歳~59歳、60歳以上」で分けることもできます。

他にも売上の構成要素別で分けると「客数、客単価」、あるいは来店タイミングであれば「月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日」などで分けることもできます。

さらにさらに踏み込んでいくと、「東京都在住の人・大阪府在住の人・・・・沖縄県在住の人」というあまり意味のなさそうな切り方や、「犬好きな人・猫好きな人・他の動物が好きな人」といったまったく意味のない切り方も、MECEであることには変わりありません。

論理的に考えるうえでMECEであることは非常に重要ですが、MECEにすること自体が目的ではありません。「売上低下の原因を突き止める」や「顧客満足度を向上させる」など、目的を達成するためにはどのような切り口にすべきかを最優先で考え、それに見合ったMECEを作ってみてください。MECEを意識するあまり、本当の目的を見失うことだけはNGです。

MECEの実践例

それでは、MECEの考え方を使った実践的なケースとして、「ファミリーレストランにおける顧客満足度を向上させる施策」を考えてみましょう。

まず、顧客満足度を分解する方法はさまざまありますが、来店から退店に関する一連のフローで考えてみます。具体的には、予約時の満足度・来店時の満足度・注文時の満足度・食事時の満足度・支払い時の満足度・退店時の満足度という6要素で考えると、モレなくダブりなく整理したうえで、各満足度についてしっかりと深掘りしていく足掛かりとなりそうです。

そのうえで、さらに「来店時の満足度」を分解してみると、駐車・受付・順番待ち・案内という4要素で構成されていると予想できます。すると店舗全体の満足度を上げるための施策として、「駐車スペースが小さいことに不満を感じている方向けに、第2駐車場をつくる」、「受付の対応に時間がかかっているため、受付用の自動発券機を導入する」、「順番待ちは店内でしかできないため、外出していても順番待ちができるようにルールを変更する」、「案内する座席が顧客の望んでいる席ではないケースもあるため、カウンターかボックスシートかを事前に選択できるようにする」などの候補を、モレなくダブりなく挙げることができます。

このようにMECEに分解することで、提案をする側にとってもされる側にとっても、網羅感のある、つまり説得力があり納得できる内容に仕上げることができますね。

まとめ

最後にまとめを見ていきましょう。

  • MECEとは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの略称であり、「ある事象がモレなくダブりなく切り分けられた状態」のことを指します。
  • ビジネスパーソンにとって必須の考え方ですが、MECEに切り分けられれば万事OKではなく、目的を達成するために必要な「意味ある切り分け」を行うことが何よりも重要です。

駆け足で進んでいきましたが、MECEの大切さを理解できたでしょうか? ぜひ明日からの日常生活・ビジネス生活に活かして、論理的な思考を実践してください!

関連記事

イシューを見極めよ

仮説思考を実践せよ

ロジックツリーで分解せよ

ピラミッドストラクチャーで伝えよ